【2027年度版】早稲田大学の「学力重視型」総合型選抜を完全解説

この記事では、早稲田大学の総合型選抜のうち、「学力重視型」と呼べる入試についてご紹介します。
総合型選抜は、入試ごとに選考のパターンやコンセプトが大きく異なります。その多くは、活動実績や課外での取り組みを重視するもので、「特別な実績がある人のための入試」というイメージを持たれがちです。ところが、そのなかには、実績よりも学力を軸に合否を決める「学力重視型」と呼べる入試も存在します。
この学力重視型は、一般選抜に向けて勉強を積み重ねてきた受験生にとって、これまでの努力をそのまま活かせる入試です。言い換えれば、一般入試を主軸に考えている方でも、早稲田合格の可能性をもう一つ広げられる選択肢になり得るということです。この存在を知っているかどうかで、早稲田への挑戦の幅は大きく変わってきます。だからこそ、この記事で丁寧に取り上げたいと考えました。
あわせて、2027年度入試から段階的に始まる「面接の必須化」という制度変更が、これらの入試にどう関わってくるのかも、後半で丁寧に整理します。
以下のような方にとって、きっとお役に立てる内容です。
- 早稲田大学の一般選抜を軸に、共通テストの受験を予定している人
- 全国レベルの実績がなくても出願できる総合型選抜を探している人
- 地域探究・貢献入試、国際教養学部AO入試、スポーツ科学部スポーツサポート歴入試に関心がある方
「総合型選抜は自分には関係ないのでは?」と感じている一般受験生の方こそ、読んでいただきたい内容です。ぜひ最後までご覧ください。
総合型選抜には「学力重視型」と「実績重視型」がある
「総合型選抜」と一括りにされがちですが、選考の設計やコンセプトに注目すると、大きく二つのタイプに分けて捉えることができます。

「実績重視型」の総合型選抜
一つは「実績重視型」です。面接試験が課され、書類による1次選考の倍率が高く、全国大会での成績や課外活動での優れた実績が問われます。その分、2次で課される学力試験は難易度が比較的おさえめで、試験時間も短い傾向があります。「総合型選抜」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、このタイプの入試でしょう。
「実績重視型」の入試例
- 早稲田大学 社会科学部 全国自己推薦入試
- 早稲田大学 スポーツ科学部 総合型選抜Ⅲ群
- 慶應義塾大学 SFC AO入試 など
「学力重視型」の総合型選抜
もう一つが「学力重視型」です。面接試験が課されない、あるいは課されても比重が小さい点、1次選考の倍率が低い点、そして求められる実績のレベルが実績重視型ほど高くない点が特徴です。その代わりに、2次選考で課される学力試験、たとえば英語や小論文の難易度が高く、入試によっては最終選考で共通テストが課されることもあります。評価の比重が、実績ではなく学力に大きく傾いているタイプだと言えます。
「学力重視型」の入試例
- 早稲田大学 地域探究・貢献入試
- 早稲田大学 国際教養学部 AO入試
- 慶應義塾大学 文学部 自主応募制推薦入試 など
「実績重視型」と「学力重視型」の違い
両者の最も大きな違いは、評価の重心が「実績」にあるのか、「学力」にあるのかという点です。
実績重視型は、日頃から活動に力を入れてきた人に向いた入試で、受験者の多くは、総合型選抜を主軸に据えた戦略を取っています。
一方、学力重視型は、1月から2月の共通テストや一般選抜に向けて学力を伸ばしていく受験生にとっても、十分に射程に入る入試です。一般選抜のための勉強が、そのまま合否に直結するからです。
実際、早稲田・慶應の総合型選抜と聞くと、「華やかな課外活動や全国レベルの表彰歴が必要なのでは?」と身構えてしまう方は少なくありません。
実績重視型については、確かにそうしたハイレベルな実績が求められます。しかし、学力重視型に目を向ければ、その先入観は必ずしも当てはまりません。学力を軸に評価される入試であれば、日々の受験勉強の延長線上で、早稲田合格の可能性を一つ増やすことができます。
一般選抜と総合型選抜を「組み合わせる」という戦略

早稲田大学を目指す方は、大きく三つのパターンに分かれます。
「一般入試だけを考えている人」「総合型選抜だけを考えている人」そして「一般入試と総合型選抜を組み合わせる人」です。ここでお伝えしたいのは、三つ目の「組み合わせる」という戦略についてです。とりわけ、一般入試をメインに、日々学力試験に向けて勉強を積んでいる方にこそ、第二の選択肢として知っておいていただきたい考え方になります。
一般入試は、言わずもがな「学力のみ」で勝負する入試です。学力だけで早稲田に合格できる確かな自信がある方は、無理に総合型選抜を考える必要はないかもしれません。
ただ、早稲田大学の一般入試は、私立大学のなかでも最難関です。方式によっては倍率が10倍を超えることもあり、進学校に通う受験生であっても、合格は決して簡単ではありません。
だからこそ、一般入試をメインに据えつつも、まだ合格に不安がある方や、学力に加えてこれまでの取り組みも評価してほしいと考える方にとって、総合型選抜は有力な選択肢になります。総合型選抜には、すでにご紹介したとおり「学力重視型」と「実績重視型」があります。
このうち学力重視型を活用すれば、一般選抜に向けた学習をそのまま生かしながら、早稲田合格の可能性をもう一つ広げることができます。
一般入試だけを考えていた方にとっても、総合型選抜を選択肢に入れておくという視点は、持っておいて損はありません。もし出願要件を満たせる活動や経験があるなら、あるいはこれから積み重ねられそうなものがあるなら、一度、組み合わせる戦略を検討してみる価値があります。
早稲田大学には、この「学力重視型」に当てはまる総合型選抜が三つ存在します。ここからは、その三つを一つずつ見ていきます。
「地域探究・貢献入試」最終選考で共通テスト80%以上が合格ライン

一つ目は、地域探究・貢献入試です。法学部、教育学部、文化構想学部、文学部、人間科学部など、複数の学部が参加している総合型選抜で、出身高校や居住地を問わず、すべての都道府県から出願できます。
この入試の選考は、三つの段階で構成されています。1次選考は出願書類の審査です。ここでは、地域で取り組んできた活動や問題意識、入学後の学びへの意欲が評価されますが、1次選考の書類審査の倍率は平均1倍程度と、厳しく受験生を選抜する設計にはなっていません。2次選考は「総合試験」と呼ばれる筆記試験で、試験時間は120分、論理的思考力を問う記述式の試験です。
そして最大の特徴が、最終選考で「大学入学共通テスト」が課される点にあります。科目は学部によって異なりますが、合格基準は「共通テスト3教科300点満点中、240点以上を得点した2次選考合格者を合格とする」と入試要項に明記されています。得点率にして「80%」です。
私立大学の総合型選抜で、最終選考に共通テストの得点基準を置く入試は珍しく、これこそが、地域探究・貢献入試を学力重視型と呼べる最も大きな根拠となります。逆に言えば、一般選抜に向けて共通テストの学習を進めている受験生ほど、この入試とは相性がよいということでもあります。
出願にあたって必要となるのは、基本的には自分の出身地域に関する探究や貢献の活動です。ボランティアやプロジェクトなど形はさまざまですが、全国レベルの活動実績は不要であることもあり、実績のハードルは低めです。地域と関わってきた経験がある方、あるいはこれから関わっていこうと考えている方にとって、挑戦しやすい入試だと言えるでしょう。
なお、地域探究・貢献入試で入学した学生には、入学後に地域連携をテーマとした演習科目が用意されているなど、入試の理念がその後の学びにつながる仕組みも整えられています。単に入学するための方式というより、地域への関心を大学での学びに接続していく入試だと捉えると、志望理由も描きやすくなります。
生徒様の事例:共通テスト80%で憧れの早稲田に
当スクールで地域探究・貢献入試を受験する生徒様は、そのほぼ全員が早稲田大学を第一志望とし、一般選抜の対策を進めながら、合格の可能性を広げるためにこの入試を活用している方々です。これまで、この入試の志望者を数多く指導してきましたが、全員が一般選抜との併願でした。
多くの場合、一般選抜の対策を進めるなかで「学力だけで合格を狙うのは難しいかもしれない」と感じ、地域探究・貢献入試を選択肢に加えていきます。その際に鍵になるのが、やはり共通テスト80%という基準です。80%という数字そのものは決して低くありませんが、早稲田の一般選抜で求められる水準と比べると、相対的に低いという特徴があります。
3科目で80%という水準は、MARCH、たとえば法政大学や中央大学の共通テスト利用入試のボーダーと、ほぼ同じ程度です。MARCHのなかでも比較的入りやすい学部の共通テスト利用と同等、とイメージしていただくと分かりやすいと思います。
一方で、早稲田の共通テスト併用方式(共通テスト+個別試験)は、政治経済学部や国際教養学部、社会科学部などで85〜90%に達することもあります。共通テスト併用方式の学部を受験しない場合でも、早稲田の一般選抜に合格する受験生は、共通テストで82%から85%前後を取る方が多いです。
ですから、一般選抜のラインと比べると、地域探究・貢献入試の80%は、早稲田というカテゴリーのなかでは低めの基準にあたります。ここに魅力を感じて挑戦する受験生が多いのも、うなずける話です。
そして、これは指導のなかで実際によく目にする光景ですが、一般選抜では惜しくも合格に届かなかったものの、地域探究・貢献入試で合格し、早稲田へ進学した生徒様は少なくありません。一般選抜で思うような結果が出なかったとしても、この入試に挑戦したことで早稲田への道が開けた、というケースが数多くあります。まさに、一般選抜を主軸に置きながら可能性を広げたい受験生のための入試だと言えるでしょう。
共通テストボーダー比較
地域探究・貢献入試 | MARCH 共通テスト利用入試 | 早稲田大学 共通テスト併用方式 |
|---|---|---|
3科目80% | 明治大-経営(3科目):85% | 政治経済-併用方式(4科目):87% |
法政大-現代福祉(3科目):80% | 社会科学-総合問題型(3科目):86% | |
中央大-文(3科目):80% | 国際教養-併用方式(2科目):86% |
「国際教養学部 AO入試」 英語一本で勝負できる入試

二つ目は、国際教養学部のAO入試です。ここでは、4月入学・国内選考の方式を取り上げます。
この入試の選考は、出願書類の審査と筆記審査で構成され、そのどちらも出願者全員に課したうえで総合的に評価されます。書類だけで通過者を絞り込む段階選抜ではなく、面接も課されません。評価の中心に置かれているのは、筆記審査です。
筆記審査は二つの試験からなります。一つは「Critical Writing」で、試験時間は120分。与えられた資料を読んで分析し、自分の考えを記述する、英語による記述式の試験です。もう一つは、2026年度入試から導入された「志望理由に関するエッセイ(日本語)」で、試験時間は30分です。
Critical Writingは、例年、英作文2題と、英検準1級レベル以上の長文読解を含む構成です。総合型選抜としては英語の難易度が高いですが、帰国子女を中心に英語の学力が高い受験生が多くために、高得点勝負の試験になります。
出願には、英検、TOEFL iBT、IELTS、GTECのいずれかのスコア提出が必須です。下限スコアは要項上定められていませんが、スコアそのものが評価の対象となるため、高いほど有利になります。
当スクールのこれまでの生徒様では、CEFR基準で「C1(英検1級相当)」の方が過半数を超えており、最低は「B2(英検準1級)」でした。国際教養学部のAO入試に出願を検討する方は、最低でもB2、できればC1を取得しておくことが、事実上の出願条件になると捉えておくとよいでしょう。
一方で、本入試は共通テストも面接もなく、英語力が合否を大きく左右する入試です。当スクールの生徒様の状況を見ても、帰国子女の方の割合が多いのは事実ですが、英語が得意な日本育ちの受験生にも門戸が開かれています。総合型選抜としては珍しく、事実上英語一本の入試であるため、、英語が得意な方にはうってつけの試験だと言えるでしょう。
生徒様の事例:英語特化型 or 一般併用型
当スクールで国際教養学部のAO入試(4月入学・国内選考)を受験する生徒様は、大きく二つのパターンに分かれます。
一つ目は、帰国子女などで英語がとても得意な方です。多くはCEFRのC1、少なくともB2の英語力を備えている一方、国語や社会は本格的な受験勉強をしていないことも多く、「得意な英語を活かせる入試」を探しているケースです。国際教養学部のAO入試は、まさに英語の比重が大きい入試であり、こうした方と相性がよいと言えます。結果として、帰国子女の割合が高くなる傾向があります。
「この入試は帰国子女しか受からない」という印象を持たれることもありますが、実際のところは、英語一本で勝負できるAO入試だからこそ帰国子女の方が手を出しやすい、というのが実情に近いと考えています。
二つ目は、一般選抜でも国際教養学部を狙っている方です。英語だけでなく、国語や社会を含む3科目の受験勉強を積んでおり、英語以外の学力も高い傾向があります。国際教養学部の一般選抜は、共通テストで85%前後という高い得点が求められるうえ、個別試験でも英語が課されます。いずれにしても英語は避けて通れないため、AO入試の段階でCritical Writingの対策をしておくことは、一般選抜の準備としても非常に有効です。
加えて、AO入試で合格できれば受験が早く終わり、その後の選択肢も広がります。こうした理由から、一般選抜を主軸に置きつつ、AO入試をサブとして受験する方は少なくありません。このパターンには帰国子女の方も多いのですが、海外在住や留学の経験がない、いわゆる純ジャパの方も一定数いらっしゃいます。
いずれのパターンでも、一つの目安になるのはC1、英検でいえば1級に相当する英語力です。もっとも、実際に当スクールの生徒様を見ると、英検1級で出願する方は多くなく、IELTSでC1相当のスコアを取得して出願する方が目立ちます。英検1級を取得するよりも、IELTSのほうがC1相当のスコアに届きやすい、という事情があるためです。とはいえ、C1が前提とはいっても、まずは最低B2ラインの英語力があれば、十分に挑戦する価値のある入試です。英語に自信のある方は、ぜひ選択肢に入れてみてください。

CEFRスコア表
CEFR | 英検 | IELTS | TOEFL iBT |
|---|---|---|---|
C2 | - | 8.5-9.0 | - |
C1 | 1級(2600-3299) | 7.0-8.0 | 95-120 |
B2 | 準1級(2300-2599) | 5.5-6.5 | 72-94 |
B1 | 2級(1950-2299) | 4.0-5.0 | 42-71 |
「スポーツ科学部 スポーツサポート歴入学試験」支える経験+共通テスト

三つ目は、スポーツ科学部のスポーツサポート歴入学試験です。名前のとおり、スポーツを「支えた」経験をもとに出願できる、2025年度入試から導入された新設の入試です。
出願資格の中心は、高校在学中に運動部などのスポーツチームの競技活動を、一定期間、定期的にサポートした経験です。マネージャー、トレーナー、コーチ、審判、アナリストといった立場が想定されています。注目したいのは、全国大会レベルの競技実績が求められていない点です。入試要項でも競技成績は参考情報として扱うとされ、評定平均の基準もありません。
選考は、こちらも三段階です。1次選考は書類審査、2次選考は口述試験で、その場で示された課題についてプレゼンテーションを行い、関連する質疑に答えます。そして最終選考で、共通テスト3教科3科目が課されます。外国語の英語が必須で、これに加えて2教科2科目を選択する3科目型の形式です。地域探究・貢献入試と同じく、最終選考に共通テストを置く三段階選考になっている点が特徴です。
合格に必要な得点は非公開です。ただし、地域探究・貢献入試の80%という基準や、スポーツ科学部一般選抜・競技歴方式の共通テストボーダーが75〜80%前後であること、そして書類審査や口述試験を含む総合型選抜という特性を踏まえると、それよりも低い「70〜75%程度」が一つの目安になると予想されます。
競技実績で勝負する入試とは異なり、支える立場での経験から早稲田を目指せる点が、この入試ならではの特徴です。部活動の中で、選手を支える役割にやりがいを感じてきた方にとっては、その経験がそのまま強みになる入試だと言えるでしょう。
スポーツ科学部の共通テストボーダー(方式別)
入試区分 | 一般選抜 | 共通テスト利用方式 | スポーツサポート歴入試 |
|---|---|---|---|
試験内容 | 共通テスト2科目+総合問題 | 共通テスト3科目+競技歴 | 1次(書類)+2次(口述試験)+共通テスト3科目 |
共通テストボーダー | 80%前後 | 75%前後 | 70〜75%前後(予想) |
生徒様の事例:マネージャー経験を活かす
スポーツサポート歴入学試験を受験する生徒様は、もともとスポーツ科学部の一般選抜を主軸に考え、共通テストの学習を中心に進めている方が中心です。
というのも、スポーツ科学部の主な入試方式は、一般選抜も、共通テスト利用(競技歴方式)も、そしてこのスポーツサポート歴入学試験も、いずれも共通テストを必要とします。そのため、スポーツ科学部を第一志望とする受験生にとっては、共通テストの重要度が非常に高いのが特徴です。裏を返せば、どの方式を選んでも共通テストの学習が共通の土台になるということでもあります。同じ準備がそのまま生きるからこそ、一般選抜に加えてスポーツサポート歴入学試験も併願する方が増えています。
一方で、この入試には、スポーツを支えた経験、つまりマネージャーやトレーナーといった立場での経験が必要です。高校在学中の活動が対象になるため、実際には部活動のマネージャーを務めてきた方が最も多いパターンになります。言い換えれば、部活でマネージャーを経験してきた方は、この入試の対象になりやすく、条件を満たす受験生は思いのほか多いと言えます。
実際に、当スクールでも、部活動のマネージャーを続けながら一般選抜を目指していた生徒様が、出願条件を満たしていたことから、スポーツサポート歴入学試験もあわせて出願した、というケースがありました。「どのみち共通テストは使うのだから」という発想です。負担を大きく増やすことなく、もう一つの可能性を確保できたわけです。
このように、スポーツサポート歴入学試験は、もともとスポーツ科学部を第一志望として目指していて、かつスポーツを支えた経験を持っている方であれば出願できる入試です。条件を満たす方にとっては、比較的負担なく準備を進められる併願先ですので、ぜひ一つの選択肢として検討してみてください。
早稲田の「学力重視型」総合型選抜が向いている人と、併願戦略

ここまで見てきた三つの入試は、どのような受験生に向いているのでしょうか。そして、一般選抜とどう組み合わせればよいのでしょうか。ここでは、少し踏み込んで整理していきます。
一般選抜を軸に、共通テストを受ける予定の人
三つの入試はいずれも、2次選考の筆記審査や、最終選考の共通テストで学力が問われます。そのため、一般選抜に向けた受験勉強が、そのまま総合型選抜の対策の一部を兼ねてくれます。
とりわけ注目したいのは、対策が「二重にならない」点です。地域探究・貢献入試とスポーツサポート歴入学試験では、1次の書類審査と2次の試験(総合試験・口述試験)には独自の対策が必要ですが、最終選考の共通テストは、一般選抜に向けた学習がそのまま生きるため、この入試のためだけの特別な対策は要りません。
国際教養学部のAO入試も、1次選考は形式的なもので、実質的には英語資格と筆記審査(Critical Writingと志望理由エッセイ)で合否が決まります。志望理由エッセイには独自の対策が必要ですが、Critical Writingは一般選抜の英語対策にもつながるため、独自対策の負担は比較的小さく済みます。
出願に必要な活動も、地域探究なら出身地域での活動、国際教養なら留学経験を問わない国際体験、スポーツサポート歴なら部活動などを支えた経験と、全国レベルの実績を要しないものばかりです。すでに経験がある方はもちろん、これから積み重ねられる活動も少なくありません。「実績がないから総合型は無理だ」と感じている方こそ、一度、自分の経験を棚卸ししてみる価値があります。
求められる学力は、早稲田の一般選抜より相対的に低い
学力重視型といっても、求められる学力の水準は、早稲田の一般選抜と比べると相対的に低くなります。先に述べた通り、地域探究・貢献入試の基準である80%は、MARCHの共通テスト利用方式のボーダーに近い水準です。年度によりますが、法政大学では文学部の地理学科や社会学部のメディア社会学科、経営学部などで、中央大学でも文学部の東洋史学や社会学、フランス語文学文化などで、共通テスト利用のボーダーが約80%となっています。
一方、早稲田大学の共通テスト利用や併用方式のボーダーは、多くの学部で88%から94%に達します。つまり、地域探究・貢献入試の80%という基準は、早稲田の一般選抜で求められる水準よりも明確に低いということです。一般選抜だけでは早稲田に届きにくい層の受験生にも、十分にチャンスがあると言えます。
ただし、この80%はあくまで最終選考の合格ラインであり、その前には書類選考と総合試験という記述式の関門があります。共通テストだけで合格が決まるわけではない点は、正しく理解しておく必要があります。それでも、一般選抜より低い学力水準で早稲田を狙える道があるという事実は、進路を考えるうえで知っておいて損はないでしょう。
一般入試の「サブ」として組み込む
これらの入試の最も現実的な使い方は、総合型選抜だけに絞るのではなく、一般選抜を主軸に置きつつ、その「サブ」として併願することです。仮に総合型で合格すれば、その時点で早稲田への進学が決まります。
結果が出る時期は、入試によって異なります。国際教養学部のAO入試は11月中に合否が分かるため、うまくいけば、一般選抜を待たずに受験を終えられる可能性もあります。一方、地域探究・貢献入試とスポーツサポート歴入学試験は、最終選考に共通テストが含まれる都合上、最終的な合格発表は2月になります。
なかでも国際教養学部のAO入試は、共通テストも面接もなく、英語力があれば勝負できる設計です。目安としては、CEFRでC1、英検でいえば1級の水準があると理想的ですが、B2、英検準1級のレベルでも十分に戦えます。国際教養学部の一般選抜を考えている方にとっては、併願先として受けておくメリットの大きい入試だと言えるでしょう。英語の学習は総合型でも一般選抜でも中心になるため、対策の相乗効果も期待できます。
3つの入試、どれを選べばよいか
自分にどの入試が合うのかは、これまでの経験と得意分野から考えると整理しやすくなります。
出身地域での活動や、地域社会への問題意識を持っている方は、地域探究・貢献入試が候補になります。総合試験と共通テストという二段構えの学力が問われるため、記述と共通テストの両方をバランスよく仕上げられる人に向いています。
英語に強い自信がある方は、国際教養学部のAO入試が第一候補です。共通テストの他科目に不安があっても、英語一点で勝負できるため、英語特化型の受験生と相性がよい入試です。
部活動などでチームを支えた経験がある方は、スポーツサポート歴入学試験を検討できます。プレゼンテーションで自分の経験を伝える力と、共通テストの基礎学力の両方を備えている人に向いています。
いずれの場合も、共通テストの学習は共通の土台になります。まずは一般選抜に向けた学習を進めながら、自分の強みに合う入試を一つ選んで準備を重ねていくのが、無理のない進め方だと考えられます。
【最新動向】総合型選抜の「面接必須化」と、学力重視型への影響

ここまで、早稲田の学力重視型の総合型選抜は「面接がない」ことが一つの特徴だとお伝えしてきました。しかし、この点については、近年の制度変更をふまえて、あらかじめ知っておいていただきたい動きがあります。
何が決まったのか
文部科学省は、2026年5月に「2027年度大学入学者選抜実施要項」を各大学へ通知しました。そのなかで、総合型選抜および公募制の学校推薦型選抜について、志望する学問分野への意欲や適性などを見る「面接による評価」を、原則として必ず行うこととされました。ここでいう面接には、個人面接だけでなく、ディベート、集団討論、プレゼンテーション、口頭試問なども含まれ、オンラインによる実施も認められています。あわせて、志願者本人が記載する活動報告書や志望理由書、学修計画書といった資料も、必ず評価に活用することが求められています。
この背景には、総合型選抜においても「学力の3要素」、すなわち知識・技能、思考力・判断力・表現力、そして主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度を、バランスよく評価すべきだという考え方があります。面接や提出書類は、このうち意欲や主体性といった側面を確かめる手段として位置づけられています。
なぜ必須化されるのか
背景には、一部の大学で、学力検査の成績に大きく偏った合否判定が行われている実態がありました。学力試験の比重が非常に大きい選抜を、一般選抜より早い時期に実施することは、実質的な「一般選抜の前倒し」ではないか、という問題意識です。総合型選抜は本来、学力だけでなく、意欲や適性を多面的に評価する入試であるべきだ、という考え方が、この見直しの根底にあります。
いつから始まるのか
この面接の必須化は、2027年度入試から原則として適用されます。ただし、前年度に学力試験を課していたなどの理由で、2027年度からの導入が難しい選抜区分については、遅くとも2029年度入試までに導入すればよい、という2年間の経過措置が設けられました。
早稲田の学力重視型への影響をどう見るか
ここが、この記事の読者にとって最も気になる点だと思います。今回ご紹介した入試のうち、地域探究・貢献入試と国際教養学部のAO入試は、現状では面接を課していません。そのため、これらは将来的に、面接や口頭試問などの評価が加わる対象になり得ると考えられます。一方、スポーツサポート歴入学試験は、すでに口述試験(プレゼンテーションと質疑)を課しており、面接に相当する評価を含んでいると捉えることができます。
もっとも、各大学が具体的にどう対応するかは、今後の発表を待つ必要があります。現時点で、早稲田大学がこれらの入試の選考方法を変更すると公表した情報は、確認できていません。経過措置があることをふまえると、少なくとも2027年度入試については、現行の形で実施されます。したがって、直近で受験を考えている方は、これまでどおりの対策を進めていただいて問題ありません。
その一方で、2029年度入試までのどこかで、面接や口頭試問といった評価が加わることになります。英語一本、あるいは学力一本で受けられる今の形が、将来的に少し変わるかもしれない、という見通しは持っておくとよいでしょう。制度が変わると聞くと不安に感じる方もいるかもしれませんが、過度に心配する必要はありません。志望理由や、これまで取り組んできた活動を自分の言葉で整理しておけば、仮に面接が加わっても、落ち着いて対応できます。むしろ、そうした準備は一般選抜や大学入学後にも役立つものです。
実績重視型との違いと、これからの備え
もともと実績重視型の総合型選抜は、以前から面接を課してきました。今回の必須化は、学力に寄っていた一部の入試にも、意欲や適性を対話で確かめる場を設ける、という方向の変更だと捉えられます。
学力重視型を志望する受験生にとって大切なのは、学力対策と並行して、自分がなぜその学部で学びたいのか、これまで何に取り組んできたのかを、言葉にしておくことです。面接や口頭試問が加わったとしても、付け焼き刃ではない、自分自身の経験にもとづいた受け答えができれば、それは大きな強みになります。
繰り返しになりますが、2027年度入試については現行の形で実施される見込みです。焦って対策を大きく変える必要はありません。まずは目の前の学力と、出願に必要な活動の準備を着実に進めることが、どのような制度変更にも対応できる一番の土台になると考えています。
おわりに
ここまで、早稲田大学の「学力重視型」の総合型選抜と、その最新動向についてご紹介しました。この記事のポイントをまとめると、以下の通りです。
- 総合型選抜は「学力重視型」と「実績重視型」に大別でき、早稲田には学力重視型が複数ある
- 地域探究・貢献入試とスポーツサポート歴入学試験は、最終選考で共通テストを課す三段階選考。私立大学では珍しい
- 国際教養学部のAO入試は、面接も共通テストもなく、英語を軸に評価される筆記型
- 求められる学力は早稲田の一般選抜より相対的に低く、一般+共通テストを予定する受験生の併願先として検討しやすい
- 総合型選抜では2027年度入試から面接が原則必須化。経過措置により2027年度は現行のままの見込みだが、2029年度入試までに選考方法が変わる可能性がある
早稲田大学の総合型選抜を検討している皆さまにとって、少しでもご参考になれば幸いです。


